巻三

 

○血が�p莢子[1]のようであること

 

真廟の時に人がおり、交趾に使いし、膋羹[2]を籠餅[3]に配して食べ、羹の中の血はすべて�p莢子のようであり、味はあまり佳くなくても、それがどうしてそうであるか知るものはいなかった。戻ってからその製法を探求したが、牛蜱[4]を取り、煮てその皮を去っただけであった。

 

○蹙融[5]

 

蹙融は、それを「蹙戎」ともいい、『漢書』はそれを「格五」といい[6]、数個の棋(こま)を用い、ともに同じ道をゆくだけだが、やはり上手下手がある。徐徳占[7]は上手に動かし、敵がなくなるに至った。その方法はしばしば余裕を持って相手を危地に送ろうとするもので[8]、その術がこのようなものに過ぎないことを知っていても、結局かれに勝ることができなかった。

 

○胡蔓

 

二広[9]に草があり、山谷の中に生じ、その名を「胡蔓草」といい、急激な流れの水[10]でそれを吞むと死に、緩慢な流れの水でそれを飲むとゆっくりと死ぬ。さらに毒蛇を捕らえてそれを殺し、草で覆い、それに水を注ぐと、菌(きのこ)がその上に生じる。取って粉にし、酒で人を毒すれば、はじめは恙ないが、ふたたび酒を飲めばすぐに毒が作用して死ぬ。茶で食べてもそうである｡その風俗はたいへん淫靡で、婦人は多く媒妁に由らないで結婚する。北人がかれらと付き合い、愛すると、北人を追って内地にゆこうとせぬことが多く、すぐにひそかに薬を食べものの中に致し、北人はさらにすぐにそれを戒めて言った。「××年にまた来てください。」その言葉に従い、去ってすぐに戻れば、それを解く薬があるが、期限を過ぎてもゆかなければ死ぬ。それを「定年薬」ともいい、北人はかの地にいったらやはりそのことを憶えておくべきである。

 

○静禅師が溪谷を指して詩を作ること

 

静禅師は、有道の老宿[11]であった。当初筠州[12]の三峰に住んでいた時、民家に祭祀に赴いたことがあった。溪谷を渡ったが、溪流は増水していた。静は遅鈍であったので、増水に流された。童子はかれを助けて岸に着いた。沙石の間に坐し、頭を垂れているさまは、雨中の鶴のようであった。童子はきっと怒り罵られると思い、仰ぎ見ようとしなかった｡すると静は突然溪を指し、詩を作って言った。「春天(しゆんてん)一夜(いちや)雨(あめ)滂沱(ばうだ)たり、添(そ)へ得(え)たり溪流(けいりう)に意気(いき)多(おほ)きを。剛(まさ)に山(さん)僧(そう)を把(と)りて推(お)し倒(たふ)し却(さ)り、海(うみ)に到(いた)り後(のち)に如何(いかん)を知(し)らざらしめんとす。」後に汝州[13]香山寺[14]に住み、病むことなしに遷化した｡

 

○学業が成就してはじめて肉を食べること

 

賈参政の父は比といい、学問があり、五代の時、進士甲科に挙げられ、開宝年間、官職は水部員外郎に至り、子弟を教育することがたいへん厳格であった。参政が五歳の時、日々千余言を暗誦させ、しばしば蔬食させ、言った。「学業成就するのを待って肉を食べろ。」参政は年が十五で、進士に登第した。士大夫の子弟に学問を好むものがいると、水部はかならず名刺を持ってゆき、会ってかれを勧誘し、しばしば言い父兄はその子弟に対しては慈愛を控え、厳格を尊び、かれらを自立させるべきで、群従[15]の孤児幼児で、貧乏で自立することができないものは、すべて養育訓誨して成人させたという。

 

○八十二歳で及第すること

 

梁灝[16]は八十二歳で雍熙二年に状元及第したが、かれの謝啓[17]に言った。「白首(はくしゆ)にして經(けい)を窮(きは)むるに伏(ふく)生(せい)[18]より少(わか)きこと之八歲(これはつさい)、青雲(せいうん)に路(みち)を得(う)るに太(たい)公(こう)[19]より多(おほ)きこと之(これ)二年(にねん)。」後に秘書監で終わり、卒年は九十余であった。

 

○張密学[20]が僧文鑑[21]を優遇すること

 

張逸密学は成都を治めた時、僧文鑑大師を優遇したが、蜀中の民がもともと尊重していた者であった。ある日、文鑑は張公に会ったが、面会の前、華陽[22]の主簿張唐輔がともに宿で待っていた。唐輔は髪を搔こうとし、烏巾を脱ぎ、文鑑を睥睨すると、かれの頭に被せたので、文鑑はたいへん怒って騒いだ。張公がすぐに招くと、座に着いてすぐに告げた。「わたしはこの官人ともともと馴染みはございませんが、先ほどすぐに襆頭をわたしの頭に被せようとしました。」張公がそのわけを尋ねると、唐輔は言った。「わたしは頭が痒くなりましたので、襆頭を取りましたが、置くところがなく、大師の頭に何もないのを見ましたので、しばらくお借りしたのですが、お怒りになろうとは。」張公は大声で笑っただけであった｡

 

○ある新しい貴人[23]を訪ねて食事すること

 

わたしは李徳修・游公義[24]と、ある新しい貴人を訪ねた。貴人が食事に引き留めると、わたしたち三人はみな左手で箸を執った｡貴人は言った。「あなたがたはみな左遷されますね[25]。」わたしはすぐに言った。「わたしたちはもとより左遷されるべきなのです。おんみなどはもしや背匙[26]の人ではございますまいか。」一座は大声で笑った。

 

○貧民は利のために動かないこと

 

興元府[27]の李翁は鍛鉄を生業とし、かろうじて飢寒を免れていた｡まもなく一女が生まれたが、容姿はきわめて麗しかった。人は彼女を花羞[28]と目し、豪貴は競って金珠を納め、妾とすることを求め、数千緡に達するものがいたが、彼女の父はすべて拒んで許さなかった。その後、妻とすることを願う貧士がいたので、かれと婚約した｡貧士は後に才学によって及第したので、人々はみなかれが貧民なのに利のために動かず、節操があったことに驚いた。

 

○六虎

 

延平の呉氏の姉妹六人は、みな凶暴残忍で、当時「六虎」と号せられていた｡なかんずく「五虎」がもっともひどく、およそ三たび人に嫁いだが、みな添い遂げず、平生手ずから下女十余人を殺していた｡夜になるたびに、しばしば堂廡の間で喧呼撃殺の音がするのが聞こえた。同室のものたちがみな懼れると、「五虎」は怒って言った。「狂った幽鬼がこのようにしようとするか。」戸を開き、榻を中庭に移すように命じ、刃を持ってひとり寝たところ､夜明けまで寂然としていた｡人は「五虎」の威力は鬼さえそれを畏れると言った｡

 

最終更新日:2018年1月2日

續墨客揮犀

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