録異記叙
怪力乱神は、聖人が語らなくても、経誥史冊には、しばしばそれがある。先達の作『述異記』、『博物志』、『異聞集』はいずれもその類である。六経図緯、河洛の書に至っては、別に陰陽神変[1]の事跡、吉凶兆朕の符合が、二気に従って生じ、五行に応じて現れることを示している。景星甘露、合璧連珠、嘉麦嘉禾、珍禽珍獣、神芝[2]霊液[3]、卿雲[4]醴泉[5]、異類が人となり、人が異類となることも、すべて数が訪れて現れたものであり、生ぜざるを得ず、数が終わって消えるものであり、没せざるを得ないのである。田鼠は鴽[6]となり[7]、野鶏[8]は蜃となり[9]、雀は蛤に化し[10]、鷹は鳩に化し[11]、星精[12]は降って賢臣となり、岳霊[13]は昇って良輔となり、古今の記録に、その類はまことに多い。さらに晋石莘神などは[14]、人間や動物に憑き、鳥の血や魚の火は、災異となり[15]、それがあればにわかに聞くものを驚かすが、それを調べれば命数に関わっている。大区[16]の中で、それがない日はない。暇な時があったので、たまたま集録した。見聞を引いたり、方冊[17]から採ったりし、好事家が披閲するのを忘れることがないことを願い、『録異記』と名づけた。臣光庭が謹んで述べた。
最終更新日:2018年5月21日