第十八巻

姑妄聴之四

　　馬徳重が言った。滄州の城南で、盗賊が一人の富豪を劫掠したときのこと、扉を破って入ると、主人夫妻はともに捕らえられたが、人々は誰何しようとしなかった。妾が東の廂房におり、変装して厨房に逃げ隠れ、竈婢(おさん)[1]にひそかに語った。「主人は盗賊の手にあるから、ともに闘うわけにはゆかない。かれらは屋根にそれぞれ人を置き、救援が来るのを見張っているが、簷の下は見られない。おまえは裏の窓を開けて簷を伝って出、こっそりとしもべたちに告げておくれ。『それぞれ馬に乗り、武器を執り、四面三五里離れたところに潜め。盗賊は四更の後にかならず出よう。四更に出なければ、夜明けに巣窟に帰られないから。出るときはかならず主人を連れてゆき、阻む人がいなければ、一二里行ってかならず許そう。許さなければ、その行方を見られる恐れがあるからだ。かれが主人を許すのを待ち、急いで負って帰り、連れ立ってかれらの後につき、去ること半里以内にいなければならない。かれが反撃すればすぐに逃げ帰り、かれが止まればまた止まり、かれがゆけばさらについてゆき、ふたたび反撃したらまた逃げ、ふたたび止まればまた止まり、ふたたび行けばまたついてゆくのだ。このようにすること再三、かれが反撃しなければ、つけてかれらの巣窟を見つけ、かれらは反撃しても、闘えず[2]、逃れられもせず、夜明けになったら、逃れられるものは一人もいない。』と。婢は死を冒して出て告げた。人々は尤もだと思い、その言葉の通りにしたところ、ほんとうにすべて捕らえられたので、竈婢に手厚く褒美を与えた。妾は正妻ともともとあまり親しくなかったが、ここにいたってやはり親しくなった。後に妾に尋ねた。「どうしてあのようなことを弁えていたのだえ。」。すると泫然として言った。「わたしはもともと賊魁某甲の娘で、父が生きておりました時、かつて申しますには、掠奪するとき恐ろしいのはこの方法だけだが、用いた者を見たことがないと。今回、事が急でしたので、ひとまず試しましたところ、さいわい効果がございました。」。だからいう。兵を用いる者は敵情を知るべきだと。さらにいう。賊で賊を攻めろと。

　　
　　戴東原[3]が言った。狐が人家の空き棟におり、主人と言葉を通じ、贈りものを齎し、たがいに器物を借りたりし、睦まじく隣人のようにしていた。ある日、狐は主人に告げた。「君の別の敷地の空き棟には、縊鬼が長年いた。君は近頃その家を壊したので、幽鬼は棲むところがなくなり、わたしと家を争いにきた。しばしば醜い姿を現し、幼い子供を恐れさせたことからして、すでに憎らしいが、さらに祟って寒熱を患わせたのは、もっとも我慢ならないことだ。××観の道士は幽鬼を祓えるから、この害を除くことを求めてはくれまいか。」。主人はほんとうに護符を買い、中庭で焚いた。すると暴風が起こり、音は轟然として雷霆のようであった。驚いていると、屋瓦ががたがたと乱れて鳴り、数十人が走ったり踏んだりしているかのようにするのが聞こえ、屋上で叫んだ。「わたしの計略は大間違いだった。悔いても手遅れだ。さきほど神将が降りてきて、幽鬼は縛られたが、わたしも追い払われたので、今から君に別れて去ろう。」。そもそも憤りに忍びず、願いを叶えるのに急であると、「両(ふた)つながらに敗れ、倶に傷(そこな)は」ない者はないが[4]、この狐を見ると、明らかな戒めとすることができる。さらに呂氏の表兄が言った（その名字を忘れたが、亡き姑の長子である。）、狐の祟りを憂える人がおり、術士を招いてお祓いさせた。狐は去ったが術士は金をせびって飽くことがなく、しばしば木人[5]紙虎[6]の類をその家にゆかせ、人を騒がした。賄すると、しばらく止んだが、十日後、またそうなり、その祟りは狐より激しかったので、家族を連れて京師にいって避け、免れた。勝ちを求めるのに勇み、小人の助けを借りると、裏切りに遭わない者はいないが、これも一つの徴(あかし)である。

　　
　　烏魯木斉(ウルムチ)の参将海起雲[7]が言った。昔、烏什[8]を征した時、戦いが終わって陣に還ると、崖下の樹の股の間から一人が首を出して外を伺っていたので、間諜かと疑い、矛を奮って刺したところ（軍中で矛(マオ)を苗子(ミヤオツ)というが、そもそも声の転である。）、石に中たり、火花が激しく迸り、矛は折れ、臂はほとんど損われた。目が眩んだかと疑ったが、矛の上と地の上に、いずれも血の跡があり、何の怪(あやかし)かは分からなかった。わたしはこれはきっと山精だと思う。深山大沢には、あらゆるものが育つ。『白沢図』[9]に載せるものは、附会が多いが、やはりいるのであろう。さらに言うには、一人の遊兵が、黒い物が石に蹲っているのを見、熊かと疑い、弓を引き絞って射たところ、三発はみな中たったが、その物は平然として気づかないかのようであった。ひどく驚き、馳せもどり、仲間を呼び、銃を持って行けば、すでに去っていた。わたしはこれも山精だと思う。

　　
　　常山峪[10]道中の加班の轎夫[11]の劉福が言った（九卿[12]の肩輿[13]は、八人交代で、都を出れば四人を加えるが、それを加班という。）。長姐は、その姓を忘れたが、山東の流民の娘で、年は十五六、父母に従って赤峰[14]で（烏藍哈達(ウランハタ)である。烏藍(ウラン)は赤の意味、哈達(ハタ)は峰の意味である。今は赤峰州[15]になっている。）就食し、田を借りて耕していた。ある日、山に入って樵を採っていたところ、風雨に遭い、岩の下に避け、雨が止んですでに暗かったので、虎を恐れて進もうとせず、草叢に隠れていた。するとはるかに双つの炬火が見えたので、虎の目かと疑った。前にゆけば、官役[16]数人がいた。衣冠は古のものでも今のものでもなく、怒鳴って尋ねた。「何物だ。正直に申せ。」。官は石に坐し、引き出させ、人々は叫んで跪かせた。長姐は山神かと思い、匍匐して命を聴いた。官は言った。「おまえは夙孽[17]によってわたしに食われることになっているが、今、捕らえられたので、おまえを食らうことにする。はやく衣を脱いで石に伏し、寸縷も留めるな。歯に引っ掛かるからな。」。虎の王だと悟り、觳觫[18]して免れることを祈った。官は言った。「見たところおまえは貌がなかなかよいから、わたしが寝るのに侍そうとするなら、おまえを許そう。後におまえの家に行き来し、おまえを幸せにしてやろう。」。長姐は怒って跳び上がると言った。「どうして神がこんなことを言おうとしましょう。きっと邪魅でしょう。食らうならば食らうだけにしてください。長姐(わたし)は良家の娘で、厚顔無恥にそうした事をすることはできません。」。石塊を拾って奮撃すると、たちまち走って散じた。これはその力が勝るに足りていたのでなく、その気が勝るに足りていたのである。その貞烈の心がその気を導くに足りていたのである。だから「その気たるや、至つて大きく至つて剛し[19]。」というのである。

　　
　　張太守墨谷[20]が言った。徳[21]、景[22]の間に富豪がおり、つねに穀を蓄えて金を蓄えず、強盗を防いでいた。康熙、雍正年間、しきりに凶作となり、米価は昂騰したが、倉を閉ざして一升の穀物も売り出そうとせず、値がさらに上がることを願っていた。同郷の人々は憂えたが、どうしようもなかった。角妓[23]で玉面狐[24]と号する者が言った。「お易いことです。お金を用意して待てばよいだけでございます。」。みずからその家にゆくと、言った。「わたしは遣り手婆の銭樹(かねのなるき)ですが、遣り手婆はかえってわたしを虐げています。昨日喧嘩して、わたしは千金でみずからを贖うことを約しました。わたしも風塵[25]に飽き飽きし、忠厚の長者に終生を托することを願っておりますが、思うに公に勝るお方はいらっしゃいません。公が千金を指し出せられれば、終生巾櫛を執りましょう。聞けば公はお金を蓄えることを好まれぬそうでございますから、銭二千貫でも払っていただけることでしょう。昨日、材木商がこの事を聞き、すでに天津に資金を取りに戻りました、かれがくるのは半月以上先のはずだと思います。わたしはこの庸奴(ばかもの)に従うことを願っておりませんが、公が十日以内に先に婚約してくだされば、たいへんありがたいことでございます。」。張はもともとこの妓女に惑わされていたので、それを聞くと驚喜し、急いで穀物を出して安売りした。倉が開くと、買う者が集まってき、ふたたび閉ざせず、その蓄えはむなしくなり、米価はたいへん安定した。穀物が尽きた日、妓女は人をやって富豪に謝らせて言った。「遣り手婆はわたしをながく養い、たちまち腹を立てて罵り、この議があることを招きました。今、過ちを悔いて挽き留めていますので、義として裏切ることはできません。申しあげたことは、しばらく後日をお待ちください。」。富豪はもともとかれとひそかに約していたので、媒妁も証人もなく、一銭の結納もなかったため、どうしようもなかった。この事は李露園[26]も語っているから、偽りではないはずである。聞けばこの妓女は年がわずか十六七であったそうだが、すぐにこのことを弁えていたのだから、やはり女侠か。

　　
　　丁薬園[27]が言った。孝廉がいたが、四十歳で子がなかった。一人の妾を買ったが、たいへん聡明であった。正妻は心安らかでいられず、朝晩罵っていた。一年後、一子を生むと、ますます容認されなくなり、遠地に転売された。孝廉は惘惘[28]として失ったものがあるかのようであった。ひとり書斎に宿り、夜、寝ないでいると、妾がたちまち帷を掲げて入ってきた。驚いて「どこから来た。」と尋ねると、「逃げ帰ってきたのです。」と言った。孝廉は沈思して言った。「逃げ帰ってきたのなら、追って捕らえにくる惧れがあるし、嫉妬深い妻はどうして匿おうとしよう。それに事がすでにここにいたっては、帰ってきてもどうしていれられよう。」。妾は笑った。「正直に申しあげます。わたしは実は狐なのです。前は人として来、人には人の理があり、罵りに耐えないわけにはまいりませんでしたが、今は狐としてまいりましたので、変幻して極まりなく、出入りする時、跡がなく、あのかたは知ることができません。」。そのため、睦むさまははじめのようであった。しばらくしてだんだん童婢に漏らされた。正妻はたいへん怒り、大金で術士を募って祓わせた。一人の術士は檄して妾を捕らえてこようとしたが、妾は罪に服さず、腕を捲って術士と争った。「子がなくて妾をとるならば、娶る理があり、子を生んで妾を追いだすならば、夫が裏切ったことになります。ゆえなく出されたのですから、わたしに罪はございません。」。術士は言った。「すでに出されたのだから、かってに帰られない。」。妾は言った。「出母[29]は嫁がなければ、子と絶えず、出婦[30]は嫁がなければ、夫とも絶えません。それにわたしを売った者は妬婦で、夫に追い出されたのではございません。夫はなおわたしを娶っており、追いだしていないのですから、どうして帰れないことがございましょう。」。術士は怒った。「おまえはもともと獣なのに、どうして人の理によって争おうとする。」。妾は言った。「人が獣の心に変われば、陰律陽律いずれも刑がございます。獣が人の心に変わると、かえって罪となりますとは、法師[31]さまはどのような憲典[32]に拠られているのでございましょうか。」。術士はますます怒った。「わたしは五雷法[33]を誦え、妖(あやかし)を誅することを知っているだけで、その他のことは知らぬ。」。妾は大笑いした。「妖(あやかし)も天地の一物でございますから、罪がなければ、天地が並育[34]せぬことはございませぬ。上帝が誅しないものを、法師はすべて誅しようとなさるのでしょうか。」。術士は案を打つと言った。「男子を惑わしたのは、おまえの罪ではないか。」。妾は言った。「わたしは礼によって娶られ、惑わしたとはいえませぬ。惑わしていたならば、精気を吸われて、このお方はとっくに枯れていたことでしょう。今、家にいること二年、また帰ってさらに五六年、健康で恙なく、いわゆる媚惑がどこにございましょうか。法師さまは妬婦の大金を受け、人を罪に陥れ[35]、酷(むご)さによって欲を満たしているだけですから、どうして承服いたしましょう。」。問答しながら、術士は召した神将を顧みたが、すでに所在を失っていた。どうしようもなく、目を怒らして言った。「今はおまえと争わないが、明日はかならず雷部[36]を召すぞ。」。翌日、正妻がふたたび促し、祭壇を設けさせようとすると、夜逃げしていた。そもそも誦えている法術[37]は正しいが、法術が賄賂によって行われているので、魅も恐れず、神将も満足しなかったのであった。言い伝えでは、劉念台[38]先生が総憲[39]の官であった時、御史台に一聯を題した。「無欲ならばつねに心をして水のごとくせしめ、有言ならばみずから覚ゆ気の霜のごときを。」。本質を知っているといえる[40]。

　　
　　莫雪崖[41]が言った。郷里の人が疫病を患って、粗末な榻に困臥していたところ、魂がたちまち門外に出、にわかに苦熱を離れるのを覚え、たいへん快適だと思った。しかし道路はまったく通らず、歩みに任せていった。たまたま一人の旧友に会い、会うと悲しみ喜んだ。かれがすでに死んだことを思いだし、たちまちひそかに悟った。「わたしはもしや冥土に入ったのか。」。友は言った。「君は死ぬべきでなく、離魂がここに来ただけだ。ここは人が来られるところではないから、ともに遊覧し、見聞を広めてはどうか。」。そこでついてゆき、城市墟落を経たが、まったく人の世と異ならず、行き来は擾擾[42]として、それぞれ営むことがあった。郷里の人はみな目送したが、一語を交わす人もいなかった。郷里の人は言った。「地獄があると聞くが、一見できるか。」。友は言った。「地獄は牢獄のようなもので、冥官でなければ開けず、冥吏でなければ導けないから、わたしはゆけない。幾つかの奇妙な幽鬼がおり、地獄と似ているが、見にゆけるぞ。」。そこで改めて分かれ路を辿った。行くこと半里ばかりして、とある場所にゆくと、広々として墓地のようであった。幽鬼を見たが、容貌は人のようで、鼻の下には口がなかった。尋ねた。「これはどういうことですか。」「この人は生きていた時、応答に巧みで、諛詞頌語(おべんちゃら)で世に媚び、人を喜ばしていたので、この報いを受け、語れなくさせたのだ。炎口の漿水[43]に遇えば、鼻で飲むのだ。」。さらに一人の幽鬼を見たが、尻が聳えて上に向かい、首は折れて下に向かい、顔は腹に着き、両手で支えていた。そこで尋ねた。「これはどういうことか。」「この人は生きていた時、みだりに尊大にしていたので、この報いを受け、顔を挙げて人に驕れないようにしたのだ。」。さらに一人の幽鬼を見たが、胸から腹まで、裂け目は数寸、五臟六腑は、むなしくて一物もなかった。尋ねた。「これはどういうことか。」「この人は生きていた時、謀りごとが深く、人は測れなかったので、この報いを受け、中に隠すものがないようにさせたのだ。」。さらに一人の幽鬼を見たが、足は長さが二尺、指は巨きな椎のよう、踵は巨きな斗(とます)のよう、重さは千斛の舟のよう、半刻努力して、はじめて一寸を移した。尋ねた。「これはどういうことですか。」「この人は生きていた時、高材捷足[44]、事あるごとに人の先にいようとしたので、この報いを受け、歩けないようにさせたのだ。」。さらに一人の幽鬼を見たところ、両耳を地に引き、双翼を引くかのようで、混沌として竅(あな)がなかった。尋ねた。「これはどういうことか。」「この人は生きていた時、疑い深く、蜚語を聴くことを喜んでいたので、この報いを受け、聴けないようにさせたのだ。みな悪業の深さに従い、報いを受ける期限が満ちるのを待ち、はじめて転輪[45]に入るのだ。その罪は地獄に減じること一等で、陽律の徒刑流刑のようなものだ。」。にわかに車騎が込み合い、一人の冥官が通り過ぎ、郷里の人を見て、驚いた。「これは生魂が、誤って漂ってここに来、迷って帰られないのだろう。かれの家を知っているものが、導いて去らせろ。」。友は跪いて開いた。「旧友でございます。」。官はすぐに送り返させた。門に着こうとすると、たいへん汗をかいて目ざめ、それから病は癒えた。雪崖は天性快活[46]で、胸中は落落[47]として隠し事がなく、朋友と戯れ、つねに雄弁をほしいままにしていた。これはかれの寓言のはずで、本当にあったこととは限らない。しかし荘生、『列子』は、なかば寓言に属し、義は勧懲するに足り、もとより舟に刻み、剣を求める必要はない[48]。

　　
　　陳半江[49]が言った。書生が、月夜に一人の娘に会ったが、容色はすこぶる艶麗であった。そっと言葉で挑むと、欣然として近づいてきた。みずから家が近くにあると言ったが、姓名を語ろうとしなかった。さらに言うには、夫はつねに数日に一度外出する、家に裏窓があり、開けることができ、塀の隙間も越えられますから、隙(すき)があったらすぐに来てください、あらかじめ期日を定めることはできませんということであった。このようにすること五六年、情誼はたいへん深くなった。ある年、書生が遠くへ行こうとすると、女は夜にきて別れを告げた。書生は言った。「人にしたがって仕事するので[50]、再会は期待できない。」。恋々とするさまは万状で、哽咽して語れなくなるにいたった。女はたちまち笑った。「このような情痴(いろぐるい)では、かならず恋の病になられましょう。これはわたしがはじめて近づいてきたときの意図ではございません。本当のことを申しあげます。わたしは幽鬼で代わりを待っている者でございます。およそ人が幽鬼と親しめば、病んで死なないものはございませんが、これは陰気が陽気を奪っているのでございます。しかしわたしはあなたがお美しいことを愛しており、玉が折れ、蘭が砕ける[51]に忍びませんので、かならず七八日経った後、あなたの陽気が回復するのを待ち、また来ていたのでございます。奪うことがあっても戻ることがございましたので、あなたは恙なかったのでございます。他の幽鬼に遇えば、思いのままに放蕩し[52]、半年たらずで、あなたを枯魚肆(ひものや)[53]で探すことになっていたことでしょう。わたくしたちはたいへん多うございますが、わたしのような者を探すとなればいたって少のうございます。ご用心なさいまし。あなたの義が重いのに感激し、報いたのです。」。そう言うと、髪をざんばらにし、舌を吐き、幽鬼の姿になり、長嘯して去った。書生は震えて魂を失いそうになり、それからは冶容に会っても、横目で窺わなかった。

　　
　　王梅序[54]が言った。交河に盗賊に誣引[55]せられた者がおり、郷民は質樸で、みずからを釈明する術がなかったので、県の吏に賄して援助を求めた。吏は、盗賊が誣引したのは、ひそかにかれの妻をからかって殴られたからだということを聞くと、かれの妻はきっと美しいだろうと思い、賄を返し、それとなく意向を示していった。「この事は内密なので、その妻がこっそりひとりでやって来れば、方略を授けられよう。」。仲介者は郷民に告げた。郷民は死を恐れ、志が萎えていたので、妻の母を獄に呼び、ひそかに事情を語った。母が妻に告げると、妻は咈然[56]として答えなかった。二三日後、吏の家で人が夜に門を叩き、開けて見れば、乞食女で、木綿の帕で頭を包み、衣は百結[57]の破れた衫で、闖然と入ってきた。尋ねても答えず、歩きながら衫と帕を解けば、鮮妝華服の艶婦であった。驚いてどこから来たかと尋ねると、頬を紅潮させ、俯いて語らず、袖から紙切れを出した。持っている燈に近づけて見てみると、「某人妻」の三字だけであった。吏は望外の喜びで、奥の間に引き入れ、来意を尋ねた。妻は涙を拭いて言った。「お言葉を理解していなければ、どうして夜に参りましょう。こちらに参りましたからには、お尋ねになる必要はございません。約束をお違えにならないことをお願いするばかりでございます。」。吏は大げさに誓いを立て[58]、睦みあった。ひそかに留めること数日、おおいに妻に惑わされ、精神は顛倒し、妻の意[59]を叶えられないことだけを恐れた。妻はしばらくすると辞して去ったが、言うには、村で毎日侮辱されており、長く住むのは難しい、城中であなたの近くに数間を借りれば、庇護に頼れ、無頼の凌辱を免れ、朝晩行き来もできましょうということであった。吏はますます喜び、手を尽くして冤罪を晴らした。事件が解決した後、郷民に遇ったが、様子はたいへん冷淡であった。その妻に親しんだので、会うことを恥じているのだと思った。後に用事で城外にゆき、その家にいったが、やはり拒んで会わなかった。絶交されたことを悟り、たいへん恨んだ。たまたま妓女を連れて賭博に誘った者がお上に訴えられたので、お上は妓女を本籍に護送するように判決した。吏が見ると、郷民の妻であったので、近づいてともに語った。妻が言うには、夫にひどく束縛され、裏切ったことを恥じている、思いはたいへん深かったが、今さいわいに逢ったから、どうか昔の数日の楽しみを思い、杖刑を許し、流刑を許してくださいということであった。吏はまたも惑わされ、お上に告げた。「妓女が供述しましたのは実家の籍で、本当は県民某の妻でございますから、かれの夫を究問するべきでございます。」。そもそも官売を唆し、自分が買おうと狙ったのであった。郷民を捕らえさせると、郷民は妻を連れてきたが、別人であった。尋ねると同郷の人々はみな偽っていないと言い、吏にどうして郷民を誣告したかと尋ねた。吏は答えられず、ただ言った。「風聞だ。」「誰に聞いた。」。黙って語らなかった。妓女を呼んで尋ねると、妓女は言った。「吏は昔、郷民の妻を脅して汚そうとし、妻は従えば操を失い、従わなければ夫が死ぬと思いました。そのとき妓女(わたし)は来たばかりでしたので、簪や珥をみな外し[60]、妓女(わたし)に賄し、名を冒してゆかせたのでございます。そのため、吏と親しんだのでございます。今回、杖を受けることとなり、たまたま逢いましたので、また郷民の妻と偽り、鞭うちを逃れることを願いましたが、かれにさらに別の謀りごとがあり、両敗[61]を致すとは思いもよりませんでした。」。お上が郷民を取り調べたところ、ほんとうに誣告されていた。かれ[62]が計略を出して死を救ったこと、さらに計略が妻から出ていることをひとまず考慮し、許して究問せず、吏を厳しく懲らした。神奸巨蠹[63]で、吏に勝るものはいないが、村婦はかれを籠絡すること、赤子を弄ぶかのようであった。そもそも愚者はつねに智者に敗れるが、物は極まればかならず反するものである[64]。また、往往にして備えたところの外で、智がその上に出ているものがにわかに現れて勝つのである。往けば戻らないことがないのは[65]、天の道である。智者がけっして敗れなければ、天地の間に智者だけが残り、愚者は絶えてしまう。そのような理があろうか。

　　
　　幽鬼が人に悪夢を見させて死に至らしめるのは、何のつもりか分からない。倪余疆[66]が言った。「わたしはこのことを施亮生[67]に聞いたが、その生魂を取って食らっているだけだ。そもそも幽鬼は余気であり、だんだん消え、だんだん減じ、無に至るのだが、生魂の気を得て増せば、さらに時間を延ばせる。だから女の幽鬼はつねに人と親しみ、その精気を摂ろうとし、男の幽鬼は人の精気を摂れないので、人を殺してその生気を吸うが、いずれも狐の採補[68]のようなものに過ぎない。」。そこで劉挺生[69]の言葉を思いだした、康熙庚子[70]、五人の挙子が、晩に雨に遭い、荒寺に泊まった。四人は眠ったが、一人は眠りが安らかでなかった。やがて、陰風が颯然とし、数人の黒い影が窓から入ってき、四人に向かって息を吹いたが、四人はすぐに魘されていた。さらに一人に向かって息を吹くと、心ははっきりしていたが、だんだん意識を失い、引く者があるようであるのを感じた。やや目ざめると、すでにもとの処を離れ、縛られているかのようになっており、叫ぼうとしたが声が出せなかった。四人を見ると、縦横に仰臥していたが、幽鬼たちはともに一人を持ち上げて食らい、まもなく尽きると、さらに次々に二人を食らった。四人目になると、突然老翁が外から入ってき、声を荒げて叱った。「野鬼よ。無礼はならぬ。このお二方は禄相があるから、犯せぬぞ。」。幽鬼たちは驚いて散じ、二人はたちまちみずから目ざめ、見たことは同じだと述べた。後に一人は教諭で終わり、一人は訓導で終わった。鮑敬亭[71]先生はそれを聞くと、笑った。「平生みずからこの官職を軽んじていたが、鬼神に重んじられていようとは思わなかった。」。かれの言うことをみると、亮生の説は嘘ではないようである。

　　
　　李慶子[72]が言った。朱生立園[73]は、辛酉[74]に北のかた順天試[75]に応じた。晩に羊留[76]の北を過ぎ、泥濘を避けるため、迂迴して道に迷ったが、泊まることができる宿はなかった。はるかに見ると、林の外れに人家があったので、投宿しにいってみた。ゆけば土の垣、瓦の家は、およそ六七間で、一人の童子が出てきて取り次いだ。朱は宿泊を請う意思をくわしく告げた。一翁は衣冠が樸雅[77]で、賓客を招き入れ、傍の建物に止まらせた。燈を持ってこさせたが、黯黯[78]として光がなかった。翁は言った。「凶年で油が良くなく、ことに人を憂えさせますが、どうしようもございません。」。さらに言った。「夜が深けておりますので、お食事[79]をお出しできません。田舎の酒を飲んでいただくだけですが、無礼と思わないでください。」。たいへん打ち解けた。朱は尋ねた。「家に誰がいらっしゃいます。」「身寄りはなく、老妻と童婢がともにいるだけでございます。」。朱はどこにゆくか尋ね、朱は北上することを告げた。言った。「一通の手紙とささやかな品物を都に届けたかったのですが、僻地で配達する人がいないことに苦しんでおりました。今、お遇いしてたいへんさいわいでございます。」。朱は尋ねた。「四方に隣家がなく、独居して恐ろしくないのでしょうか。」「薄田数畝があり、奴隷たちに耕作させておりますので、近くに卜居しているのでございます。貧しくて貯蓄がないので、盗賊は恐ろしくありません。」。朱は言った。「曠野に鬼魅が多いでしょう。」。翁は言った。「鬼魅は見ません。怖れられるなら、夜明けまで付き添って、よろしいでしょうか。」。そこで朱に紙と筆を借り、入って手紙を書き、さらに雑貨を函に封じ、旧い布で包み、そのおもてをしっかりと縫い、朱に渡して言った。「住所はすでに函に書きました、都に着いてから開けてごらんになれば、おのずとお分りになりましょう。」。夜明けに別れ、さらに託した物[80]を遺失しないようにつよく言い含め、はじめて慇懃に別れた。朱が都に着き、布の包みを開いてみると、函には「朱立園先生開字[81]」と題してあったが、その品物は金の簪、銀の釧それぞれ一双で、その書札はこう称していた。「わたしは老いて子息がなく、誤って妻の言葉に惑わされ、婿を後継ぎにしました。外孫になってもまだ一回おきに墓参していましたが[82]、後には異姓とみなしました。紙銭麦飯[83]は、とうの昔に事欠いており、三尺の孤墳[84]も、傾き崩れてしまいました。九泉に悲しみを忍んでいますが、百たび悔いても手遅れです。棺に殉葬されたささやかな物を、お売りになることを謹んでお願いします。帰途、得られた代金で、荒れた墓を直し、塚の南の水路をすこし浚い、淫潦(みずたまり)が幽窀(はか)を浸さないようにすることを願います。願いをご承諾くださりますなら、かならず杜回[85]が草を結んだようにいたしましょう[86]。あなたが幽鬼を恐れられることは分かっておりますので、暗闇の中で稽首[87]いたします。姿を現し、疑いを増そうとはいたしませぬ。亡人楊寧頓首。」。朱は驚き、汗は背を潤し、はじめて幽鬼に遇ったと悟り、手紙の「帰途」の言葉から、かならず合格しないことを悟ったが、その後、ほんとうにそうなった。帰って羊留に至り、簪や釧を売った銭でしもべをゆかせ、その墓を修理させ、ふたたびゆこうとしなかった。

　　
　　呉雲岩[88]が言った。秦生という者がおり、幽鬼を恐れず、つねに一見しないことを遺憾としていた。ある晩、別荘を散歩していると、樹の外で唐人の詩を朗吟するのが聞こえた。「みづから去りみづから来りて人知らず、帰る時ただ対す空山の月[89]。」。その声は哀しく、激しく、長かった。木の葉越しに窺うと、古の衣冠の人が石に倚って坐していた。確かに幽鬼であると悟り、すぐに進んで捕まえた。幽鬼も逃げなかった。秦生は長揖[90]して言った。「あなたとは、路は幽明を異にし、人は今古を異にしていますから、『邂逅して相遇ひ[91]』ましたが、時候のご挨拶はできません。来たわけは、鬼神の様子をお尋ねようとしただけです。幽鬼になった時、どのようであったのかお尋ねしたいのです。」「形骸を脱すると、すでに幽鬼となっていた。繭が蝶になるようなもので、自分でも気づかなかった。」「魂は上り、魄は下れば、また太虚に入るのですか。」「わたしは幽鬼になってから、こちらにいるのだ。今、わたしは全身を現して君に対しており、氤氳とした[92]元気[93]に随い、昇降飛揚[94]し、子孫が祭る時にはじめて集まり、子孫の祭りが終われば散じるということはない[95]。」「本当に神がいるのですか。」「幽鬼が嘘ではないのだから、神はもちろんでたらめでない。例えれば、人民がいればかならず官師[96]がいるようなものだ。」「先儒は、雷神の類は、みなたちまち生じてたちまち化すると称していますが[97]、本当に嘘ではないのですか。」「貧乏書生であった時、嫌というほどこの説を聞きいたが、霹靂が落ちるとき、轟然とつぎつぎに起こるから、一つの雷に一つの神がいるならば、神の数は蚊蚋より多く、雷が止んで神が滅ぶのならば、神の寿命は蜉蝣より短いのかとひそかに訝っていた。そのことを先生に質すと、かならず叱責に遭った。幽鬼になった後、百神が奉職するのは、世が官職を設けているようなもので、いずれもつかの間の幻影でないことを知り、見聞きしたことを、ふたたび先生に質したくてたまらなくなった。しかし、当時皋比[98]を擁していた者は、思えば幽鬼となってすでにひさしく、みずから分かっているはずですので、もはや質す必要はない。だいたい、無鬼の説は、聖人にはないが、大儒たちは人が諂うことを恐れたため[99]、むりにこの説を作ったのだ。しかし沈湎(のんだくれ)を禁ずるのはよいが、酒醴(さけ)を廃するのはよくなく、淫蕩を禁じるのはよいが、夫婦を廃するのはよくなく、貪婪を禁じるのはよいが、財貨を廃するのはよくなく、闘争を禁じるのはよいが、五兵[100]を廃するのはよくない。だから、一代の盛名により、百千万億の朋党の助けを恃み、人が黙って語ろうとせぬようにさせることはできても、結局その心を従わせられないのは、この理由によっているのだ。その教えを伝える者は、そうでないことを知っているが、その論を持せず[101]、精義[102]の学と称せられなくても、不本意ながら折り合いをつけて『理はかならずこのように言う。』と言うのだ。君は先儒の邪を正す[103]意は、憤激したことから生じており、その本心ではなく、後儒の邪を除く説は、畏れるものに圧迫せられたのであって、その本心ではないことを察していない。儒者が本当に鬼神がいないと思っていると信じているのか。皇皇(びくびく)[104]として質問[105]するのは、君が騙されて久しいということだ[106]。泉下の人は、久しく生人と接しようとせず、君も久しく幽鬼と親しむべきでない。言うことはこれで尽きた。あとは類推できよう。」。長嘯して去った。案ずるに、これは儒者が明らかに幽鬼のいることを知りながら、ことさらに幽鬼がいないと言っているということであり、黄山の二鬼が儒者は明らかに井田[107]封建[108]を行えないことを知っていながら、ことさらに行えるといっていると言っていたのとあわせて[109]、いずれも癥結[110]を洞見した論である。迂闊と目するばかりでは、五里霧中に堕ちているかのようである。

　　
　　汪主事厚石[111]が言った。西湖で扶乩した者がいたが、下壇詩に言った。「旧香を埋(うづ)むる処草離離たり、ただ西陵[112]の夜月の知るのみ。詞客情多く来りて古きを弔ひ、幽魂腸断ちて題詩を見る。滄桑幾劫湖なほ緑に、雲雨千年夢なほ疑ふ。誰か信ぜん霊山散花の娘、今仏火琉璃に対す。」。人々は蘇小小[113]だと悟った。ある客が尋ねた。「仙姫(おんみ)は南斉のお生まれなのに、なぜ七律もできるのでしょう。」。乩は判じた。「歳月[114]を経ても[115]、幽明は一理であり、性霊[116]は滅びず、世とともに推移するのです。宣聖[117]は大篆[118]を知っているだけなのに、祝詞[119]はどうして隸書で書くのでしょうか。釈迦は華語を解せないのに、疏文はどうして駢体で書くのでしょうか。このことから、千年前の人の性識[120]は今でもあり、今の言葉を解し、今の文に通じていることが分かります。江文通[121]、謝玄暉[122]（編者が按ずるに、謝玄暉とは謝希逸[123]の誤りであろう。）は『愛妾換馬』八韻律賦（『纂異記』[124]に見える）を作れ、沈休文の子青箱は『金陵懐古』[125]五言律詩を作れ、古にその事がございましたのに、さらにどうして今疑うのでしょうか。」。さらに尋ねた。「まだ永明体[126]を作れるか。」。すぐに四詩を書いた。「歓来りて来るを得ず、儂去りて去るを得ず。懊悩す石尤風[127]、一夜人の渡るを断つ。」。「慶びはいづこより来る。今日は大風雨。湿り尽くす杏子衫[128]、辛苦みななんぢによる。」。「結束[129]す蛺蝶裙[130]、歓をなし舴艋[131]に棹さす。宛転として大堤にそひ、緑波双照の影。」。「荷花汀にとまらず、しばらく泊まる楊柳の岸。花外人の行くあり、柳深くして人見えず。」。そもそも『子夜歌[132]』であった。才鬼が憑いたものとはいえ、雄弁といえる。

　　
　　表兄の安伊が言った。河城の収穫の時、若い女が子を抱いて塍の上を歩いていたが、たちまち足を滑らして地に倒れ、臥してふたたび起たなかった。収穫していた者ははるかにそれを見、事情があるかと疑い、走っていって見たところ、すでに死んでいた。子も瓦の角に触れ、脳が裂けて死んでいた。驚いて田の持ち主に報せると、田の持ち主は里胥に報せた。死者を検分すると、数十里以内にこの女はおらず、衣飾は華麗清潔で、子も銀の釧に紅い綾の衫で、貧しい家のものらしくなかったので、おおいに惑って解せなかった。ひとまず葦簾(よしず)で覆い、交代で見守り、急いでお上に報せた。河城は県から近かったので、官は翌日の夕方に来たが、簾を開いて検視したところ、中に枯れた稭(くき)一束が置かれており、二体の屍はすでに見えなくなっていた。箔を抑えていた磚はもとより動いておらず、見守っていた者は頃刻も離れていなかった。官はたいへん怒り、田の持ち主及び見守っていた者をすべて捕らえてゆき、あれこれ取り調べたが、謀殺死体遺棄の様子はすこしもなかった。紛糾すること一年あまりで、疑獄として上申された。上官は案情が曖昧なので、繰り返し詰問した。さらに一年あまりして、ひとまず調べにいったところ[133]、家はすでに空っぽになっていた。これは康熙癸巳[134]、甲午[135]の間の事であった。言い伝えでは、村の南の墓地で、黒い狐が夜な夜な月を拝しているのを、人はしばしば見た。この家の一子が弋猟を好んでおり、ひそかにゆき、伏して伺い、弩を引き絞ってその股に中てたところ、噭然と長く叫び、火花と化して西へ去った。その穴を捜すと、二匹の小狐を捕らえたので、縛って返ったが、たちまち逃げさった。一月あまりして、この事があった。狐が化けて怨みに報いにきたのかと疑った。しかし荒誕でよりどころがなく、人は供述しようとせず[136]、お上も案牘[137]に入れようとせず、死体隠匿として論ぜざるをえなかった。だからここまで混乱したのであった。さらに言うには、城西の某村に乞食女がおり、姑に虐げられ、土神祠で縊れた。やはり箔で覆い、調べを待ち、交代で見守った。官が来れば、屍と守る者はともに見えず、徹底調査すること河城のようであった。七八年後、安平（深州の属県である。）で見つかった。夫妻はすこぶる白皙で、一人の若者が交代で見守っていた時、下着を剥いでその屍に淫したところ、屍人が気を得て再生したので、連れだって逃げたのであった。これは康煕末年の事であった。ある人は河城の事はこれと同じだと疑ったが、そうかも知れなかった。同じ事で、伝聞が誤ったのかもしれない。

　　
　　同年の龔肖夫[138]が言った。四十余で子がいない男がいたが、妻は嫉妬深く、まったく妾を娶るすべがなかったので、つねに鬱鬱として不快であった。たまたま道観にゆくと、道士が招いて言った。「あなたは気色が凝滞[139]し、深い憂えがあるかのようにしていられます。道家は人を救うことを旨としておりますから、本当のことを仰ってはいかがでしょうか。鉛の刀[140]もお役に立つかもしれません。」。その言葉に驚き、つぶさに告げた。道士は言った。「もとよりお聞きしておりましたが、ひとまずお尋ねしただけです。鬼卒の衣装十着ばかりをお作りになれば、復命があるはずでございます。作れなければ、伶官(わざおぎ)に借りられてもようございます。」。ますます怪しんだが、騙し取っても使いようがない[141]、かならず事情があるはずだから、ひとまずかれのすることを試そうと思った。その晩、妻は夢で魘され、呼んでも目ざめず、呻ったり叫んだりする声はたいへん悲惨であった。翌日、両股はすっかり青黒くなっていた。尋ねると、秘して言わず、嘆息するばかりであった。三日後もそうであった。それから三日後ごとにやはりそうであった。半月後、たちまち奴隷を遣わして媒婆を呼び、言った。「妾を買いたい。」。人々はみな信じなかった。その夫も後患を慮り、とりわけ疑った。その後、妻は意識を失って日を重ね、目ざめたが、妾を買うように促すことはますます急で、金を案に並べ、童僕と約し、三日で見つからなければ必ず厳しく打ち、見つかっても美しくなければやはり厳しく打つことにした。その様子をみると嘘ではないかのようだったので、二人の娘を捜して対応したところ、どちらも留めた。その晩、すぐに衾枕を整え、その夫を促して部屋に入らせた。家を挙げて驚き、その趣旨を悟らず、夫も惘惘[142]として夢境にいるかのようであった。後にまた道士に会ったところ、はじめてかれらに魂を捕らえられる術があることを知った。それは、夜な夜な観中の道士たちに幽鬼の装いをさせ、道士は星冠[143]羽衣で、堂上に坐し、符を焚き、妻の魂を捕らえ、かれの祖宗や舅姑が祭祀を絶やす[144]不孝を、書状を調えて冥府に訴えたので、桃杖[145]を用いて百回打つと言い、帰らせ、期限を定めて妾を娶らせたということであった。妻は当初悪夢かと思い、なおも承知しなかった。にわかに三日に一度捕らえ、徴比[146]のようにした。意識を失って日を重ねていたのは、かれの魂を逆さ吊りにし、鼻に酢を注ぎ、三日で良い娘が見つからなければ、すぐに泥犁[147]に引き渡すことにしていたのであった。魂を捕らえることは小術[148]であり、もとより正しい法でないが、法には正邪はなく、人の用いかたによるのである。たとえば同じ武器でも、それを用いて殺したり奪ったりすれば強盗で、それを用いて征討すれば王師である。術には大小はなく、人の用いかたによるのである。たとえば不亀手の薬が[149]、綿を晒すこともでき、大いに越軍を破ることもできるのである。道士はいわゆる「よくその術を用ゐ」たものか[150]。頑愚な悍婦に至っては、情理でも諭せず、法令でも禁じられず、道士が術で制することができる。尭が一頭の羊を引き、舜が従って鞭うっても、羊は進まないが、一人の牧童が駆れば群れて進む。物にはそれぞれ制するものがあり、薬にはそれぞれ恐れるものがある。神は教えを設け、天下の悪人を従わせる。聖人の考えは深く、講学家はどうしてそれを知ろうか。
　　

　　褚鶴汀[151]が言った。太学生がおり、資産は巨万であった。妻は一子を生んで死んだ。後妻は、容色が豊かであったので、太学は惑わされた。家政を輔佐するものがいないことに託け[152]、母を迎えてき、母はさらに二人の妹を連れてきた。一年足らずで、一人の兄と二人の弟も、家族を連れてきた。しばらくして童僕婢媼はすべて妻党となり、太学父子は、かえって煢煢として寄食しているかのようになった。さらにしばらくすると筦鑰(かぎ)[153]簿籍、金銭食糧の出入りは、まったく聞かせず、残杯冷炙(のこりもの)を与え、かえって厭悪蔑視[154]を与えた。すこし堪えられなくなり、侵された権利を奪い返そうとすれば、妻の兄弟が外で騒ぎ、妻の母や妹たちも中で罵った。かつて人々に殴られ、鬚が抜け、顔が破れるに至ったが、救いを求めても答える者はいなかった。かれの息子は狂奔して来、掴まれて地に倒され、叩頭して死を許すことを乞うばかりであった。そしてみずからは怒りにたえず、裏庭にいって自縊しようとした。するとたちまち一人の老人が止めて言った。「やめろ。おんみの家の事に関しては、神も人もともに久しく憤っている。わたしはおんみの家にながくおり、不平はもっとも大きい。土神祠で牒を焚き、裏庭の狐に追い払わせることを願いますと言いさえすれば、神はおんみのいうことをかならず聴こう。」。その言葉の通りにした。その晩、ほんとうに屋瓦が乱れて鳴り、窓や扉が震え、妻党はみな磚(れんが)や石に撃たれ、額を破り、血を流した。まもなく妻党の婦女は、すべて狐に惑わされ、その母も免れなかった。昼は発狂して裸で走り、醜い言葉、淫らな有様で、あらゆることをし、夜は部屋ごとに数十匹の狐が集まり、交代で嬲り弄んだ。その傷にたえず、哀願する声が聞こえた。厨房の食事は、ともに摂って太学父子の前に置き、妻党が食らうものにはすべて汚物が雑じっていた。留まれないことを悟り、みな逃げ帰った。太学はいささかの旧僕を集め、ふたたび家政を治め、はじめて自活できた。妻党は狙って[155]止まず、つねに探りにきたが、門に入るとかならず撃たれ、持ち出したものがあっても、家に帰れば嚢はすでに空しくなっているのであった。その妻がひそかに贈った時もそうであった。それからは姿を消した。しかし資産の損失を合計すればすでに多かったから、狐の力がなければ、太学父子は餓死者となっていたであろう。これは至親親友も謀ってやれないことを、この狐が手を尽くして謀ってやったものだから、狐は人に勝っているのではなかろうか。人は世故に長けているので、嫌疑を避け、怨恨を恐れ、易きに走り、難きを避け、坐視して救わないが、狐は世故を諳んじていないので、忠厚の長者の名を博するのには巧みでないが、義としてなすべきときには、奮然として起つのである。狐とはいえ、かれらのために執鞭するのも、望むところである[156]。

　　
　　盲人の劉君瑞が言った。一人の盲人がおり、年は三十余で、つねに衛河[157]の傍を行き来していた。舟を泊める者に遇うとかならず尋ねていた。「こちらに殷桐はいましょうか。」。さらにかならず言った。「夏殷の『殷』、梧桐の『桐』でございます。」。かれとともに宿っている者がいたが、かれの夢の中での寝言も、この二字だけであった。かれの姓名を問えば、十日にかならず一変したが、深く質す者はいなかった。このようにすること十余年、人々は多くはかれを知っていた。かれに逢って尋ねられそうになると、「こちらに殷桐はいないから、よそを捜すとよい。」と叫ぶものもいた。ある日、糧艘[158]が河岸に泊まると、盲人は尋ねること初めのようであった。一人が身を挺して岸に上がり、言った。「おまえか。殷桐はこちらにおり、おまえに何ができる。」。盲人は狂って吼えること虓虎[159]のようで、その頚を打って抱え、口でその鼻を齧り、血は淋漓として地に満ちた。人々は引き離そうとしたが、牢として引き離せなかった。ともに河の中に落ち、流れに従って没した。後に天妃宮[160]の前で屍が見つかった（河口は屍を寄せつけない[161]。河で屍を探して得られない時は、天妃宮の前にゆくとかならず浮いて出る。）桐はその左の肋骨を打ち砕かれており、手はまったく放しておらず、十本の指は桐の肩と背をしっかり掴み、深さ一寸あまり食い込んでいた。両顴と両頬は、肉が齧られてほとんど尽きていた。結局それが何の仇なのか分からなかったが、疑うらくはきっと父母の怨みであろう。そもそも目のない人でありながら、目のある人を探そうとしても、その不可能であることは明らかで、孱弱な人でありながら、強暴な人を打とうとしても、敵しないことは明らかである。伍胥[162]の楚への怨みと比べて、報いることはさらに難しかった。十余年意を堅くして変えず、ついにその肉を食らったのは、まさに「精誠の至り、天地もまた違へず[163]。」ということであった。宋の高宗[164]が湖山に歌舞したことは、結局、力が弱かったからだと解することはできない[165]。

　　
　　王昆霞[166]は『雁宕遊記』[167]一巻を作り、朱導江はわたしのために掛幅を書いたが、その中の一条を摘記する。「四月十七日、晩に小石門[168]を出、北磵[169]に到った。遊びに耽り、返るのを忘れ、樹の下に坐して月の上るのを待った。疲れてまどろんでいると、山風が衣を吹き、慄然としてたちまち目ざめた。すると人が語るのがかすかに聞こえた。『夜気は清澄、たいへん幽絶で、罨画図[170]の中で金碧[171]山水を見るのに勝る。』。ともに遊覧している者が夜に来たのだと思った。まもなくさらに言った。『『古琴銘』[172]に『山は虚しく水は深く、万籟蕭蕭たり。古に人蹤なく、ただ石の嶕嶢[173]たるのみ。』というのは、本当にうまく書けていて、名状し難い景色だ。かつて洪谷子[174]に乞うてこの意境を描かせようとしたが、筆を下せなかった。』。これは誰だろう、荊浩[175]に会ったとはとひそかに訝り、起坐して聴いていた。するとさらに言った。『さきほど東坡が竹を山腹に描き、枝を分け、葉を散らしたが、春の雲が岫を出ているかのようで、疏(まばら)だったり密であったり、意態(おもむき)は自然で、杈椏[176]怒張[177]のありさまはなかった。』。さらに一人が言った。『近頃かれの『西天目』の詩[178]を見たが、たとえば『空江秋浄(きよ)く、煙水は渺然として、老鶴は長唳し、清飈[179]は遠く引く』なども、縦横[180]の気を消し尽くしている[181]。才子の筆は、務めて巧思を尽くしているが、飛仙[182]の筆は、巧みで天然に出ているので、境地がもとより同じでないだけだ。』。仙人であると悟り、立ち上がり、仰ぎ見た。たちまちぽとんと音がし、山花が乱れ落ち、二羽の鳥が雲を衝いて去った。」。その詩の「躡屐[183]すこぶる笑ふ謝康楽[184]、鶴に化してみづから徐佐卿[185]を見る。」の句は、この事を記している。

　　
　　劉擬山[186]の家で金の釧(くしろ)がなくなったので、若い下女を拷問すると、打鼓の者（京師には無頼の遊民が多い。妻は家で門に倚り[187]、その夫は白昼避けて外出し、二つの荊筐[188]を担ぎ、短い柄の小鼓を持って撃ち、雑貨を買うのだが、これを打鼓という。およそ童婢、幼児が盗み出した物を、多くは廉価で買いとるのである。盗みはしないものの、その実、盗賊の羽翼である。しかし盗品は微細であり、価値は多くなく、蹤跡も知れないので、追究できない。そのため、王法も禁じられないのである。）に売ったとくわしく認めた。さらに、打鼓の者の衣服や姿に関して拷問したが、求めても供述は得られなかった。さらに拷問すると、突然、承塵[189]の上でかすかに咳してこう言った。「わたしはおんみの家に四十年いるが、姿と声を一度も現そうとしなかったから、わたしがいたことを知るまい。今は本当に我慢できない。その釧(くしろ)は夫人が雑貨を点検しているとき、誤って漆の奩(はこ)の中に置いたのではないか。」。言葉の通りに捜すと、ほんとうに偽りはなかった。しかし若い下女はすでに完膚がなかった。擬山は終生恥じて悔い、つねにみずから言っていた。「しばしばこうした事があることは免れないが、あちこちにこの狐がいることはできない。」。そのため仕官すること二十余年、取り調べるときに拷問によって追究したことはなかった。

　　
　　多小山[190]がいった。かつて景州で扶乩する者を見たが、仙を召しても来なかった。ふたたび符を焚くと、乩はしばらく揺れ、一首の詩を書いた。「薄命軽きこと葉のごとく、残魂転蓬のごとし。練は引く三尺の白、花は謝す一枝の紅。雲雨期すること久しといへども、煙波路通ぜず。秋墳むなしく鬼唱ひ、遺恨あり宋家の東。」。縊鬼だと悟り、ひとまず姓名を尋ねた。するとさらにこう書いた。「もともとは呉門のもので、楚沢[191]に僑居しておりました。たまたま業縁[192]によって出会い、宛転として言葉を通じましたが、良い夢は成らず、あたふたと死に就きました。聖賢の礼で律すれば、君子に謗られて当然でございます。その児女の情[193]を、才人は憐れむかもしれません。いささか哀しみ怨みを述べましたが、姓名はお尋ねにならないでください。」。この才は李清照[194]に劣らず、その聖賢児女の一聯[195]の、自評も的確である。

　　
　　『新斉諧』[196]は冥府の額にあった呂留良の罪を載せ、「排仏がひどすぎた。」といっている[197]。これはけっして事実ではない。留良の罪は、明が亡びた後のことで、首陽で餓死して夷斉[198]に倣うことができず、さらに姿を隠し、名声を避け[199]、世外に鴻冥[200]し、真山民[201]の比(ともがら)のようにすることができなかった。青衿[202]で受験し、身は膠庠[203]に列なり、その子葆中[204]も、科名を得、第二人[205]として翰林院に入ったので、久しく周の粟を食らっており[206]、みずからを殷頑[207]に比することは断じてできない。ほしいままに謗書[208]を作り、黔首(たみくさ)を眩惑することがどうしてできよう。桀の犬が尭に吠えたことに偽托したのは[209]、首鼠両端、進退はしっかりせず[210]、本当に狡猾反覆[211]の最たるものである。かれの生平を調べると、本当に銭謙益[212]に等しい。歿して冥罰を受けたのは、きっとこのことによっていよう。かれの講学排仏に至っては、朱[213]を尊ぶため、陸[214]、王[215]を排斥して禅とせざるをえず[216]、禅を排斥した以上、関連しておのずと排仏せざるを得なかったのであり、かれの本来の志でなく、かれの本当の罪[217]でもなかった。金人[218]が夢に現れて[219]以来、排仏した者は多く、排仏がひどすぎた者も多かった。これを罪としたのは、留良がさらに何か言うことを恐れたのである[220]。そもそもかつて五台[221]の僧明玉[222]の言葉を聞いたことがある。「排仏の説は、宋儒は深遠で昌黎は浅薄、宋儒は精緻で昌黎は粗雑である。しかし緇衣の徒は、昌黎を恐れて宋儒を恐れず、昌黎を怨んで宋儒を怨まない。そもそも昌黎が排斥したのは、檀施[223]が供養する仏で、愚かな男女のために言ったのである。宋儒が排斥したのは、明心見性[224]の仏で、士大夫のために言ったのである。天下の士大夫は少なくて愚かな男女は多く、僧徒の収入[225]も、士大夫に援助されることは少なく、愚かな男女に援助されることが多い。昌黎の説が勝れば、香積[226]に煙がなく、祇園[227]に地がないことになるが、大善知識[228]があっても、恒河沙[229]の衆を率いて、空腹野宿して説法することができようか。これは兵を用いる者が、まず糧道を断てば、攻めずしておのずと潰えるようなものである。だから昌黎をたいへん恐れ、昌黎を恨むことも激しいのである。宋儒の説が勝っても、あなたの儒理はこのようで、儒法はこのようで、あなたはわたしに従う必要はなく、わたしの仏理はこのようで、仏法はこのようで、わたしもあなたに従う必要はありませんということに過ぎない。それぞれ聞いていることを尊び、それぞれ知っていることを行い、たがいにがんばりあい[230]、害を与えたことはない。だから宋儒を恐れないし、あまり宋儒を怨まないのだ。」。それならば唐以前の儒者は、一語一語が実用で、宋以後の儒者は、一事一事がすべて空談である。講学家の排仏は、釈氏にすこしも損益がなく、いたずらに喧しいだけである。録して功と思っても、もとより讜論[231]であり、録して罪と思っても、留良を重視するのを免れない。

　　
　　しもべの王発は、夜に猟して帰った。月明かりの下、一人の男が二人の男にそれぞれ片腕を捉えられ、東西に引かれていたが、寂として声が聞こえなかった。闇夜の中、衣物を剥いで奪っているのかと疑って、空に向かって空砲を鳴らした。二人は走って散り去り、一人は走って戻り、たちまちすべて見えなくなった。はじめて幽鬼であったことを悟った。村の入り口に着けば、一つの家に燈火が出入りしており、人語が騒がしく「新婦が縊れ死んでまた甦った。」と言っていた。妻は言った。「姑が夕食に餅(へい)を作るように命じましたが、犬が二三個を銜えて去りました。姑は食べものを盗んだと疑い、その頬を痛打しました。冤罪は晴れず、ぼんやりと樹の下に立っていました。するとにわかに一人の娘がきて勧めました。『このような酷い目に遭ったのですから、死んだほうが宜しいでしょう。』。ためらって決心しないでいますと、さらに一人の娘がきて唆しました。すると恍惚として[232]、みずからを忘れているかのようになり、帯を解き、縊れますと、二人の娘が手助けしました。痛みと苦しみは、ほとんど名状し難く、だんだん眠るかのようになり、しらぬまに身はすでに門の外に出ていました。一人の娘は言いました。『わたしが先に勧めたのですから、わたしに代わるべきです。』。もう一人の娘は言った。『わたしが後から来なければ決断しなかったのですから、わたしに代わるべきです。』。争って奪っていますと、たちまち霹靂の音がし、火花が四方を照らしましたので、二人の娘は驚いて逃げ、わたしは帰ってきたのです。」。後に発が夜に帰ると、かならず遠くで哭いて罵るのが聞こえ、こう言っていた。「わたしの事を台無しにしたのだから、かならず殺してやる。」。発はそれでも恐れなかった。ある晩、さらに哭いて罵るのが聞こえたので、発は怒鳴った。「おまえは人を殺し、わたしは人を救ったのだから、たとい神に告げられても、わたしの筋が通っている。殺せるものなら殺してみろ。恐れる必要はないぞ。」。それからは来なくなった。それならば、人を死から救っても、殺そうとしていた者の怨みを招き、手を束ねるほうがずっとよいということか。この奴隷もすこし変わっていた[233]といえる。

最終更新日:2011年11月7日

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